情報もネットにたくさんありますし、結局どれがいいのかわからなくなりますよね。
それも車の選択に関する研究なのです。これはインパクトのある研究ですよ!
じっくりと考えればよい選択が可能?
数ある中から車を一台選ぶ。
そういう場面ではじっくり慎重に検討を重ねますよね。
私たちは何事もじっくり考えることで良い選択ができると考えます。
例えば、論理的に考えることでベストな選択ができると考えています。
選択肢のメリットとデメリットをちゃんと考慮すれば後悔の無い選択ができるように思えますよね。
しかし、研究者らは「この法則はすべてのことに当てはまるのだろうか?」と疑問をもったのです。
確かに、スーパーでの買い物など些細な選択をするときは考えて決断した方がよいかもしれません。
ところが、車の購入や住宅の購入などでは考えて決断したからといって必ずしも満足のいく選択ができるとは限らないのです。
なぜなら、それらにはオプションなどを含めると無限大に近い選択肢があり、いくらメリット・デメリットを比較検討するといっても限界があるからです。
つまり、考えようにも頭がパンクしてしまうわけですね・・・。
そういう時、私たちはどうするでしょうか。
私たちは時に「思考を寝かせて」選択するときがあります。
一旦、問題や選択から離れて別なことをしてから、選択することがあります。
不動産屋さんにいって何軒か物件を見たが、どれにしてよいか迷ってしまった。
その場では決めずに、後ほど、思いついたら担当者さんに連絡する・・・ということにした。
あくる日、家で料理をしている最中に「あの物件にしよう!」と閃いた・・・。
しかもこういう選択ってなぜか満足のゆく選択だったりしませんか。
それもそのはず。
じつは、気づかないだけで私たちの無意識が考えてくれているのです。
さらに、無意識が扱える情報処理量は想像を絶するほど増大。
この例で言えば、物件を見てから家に帰った後、料理しているとき、無意識はずっとアパートの選択について考えてくれています。
つまり、研究者らは別なことをしている間も私たちの無意識が勝手に選択について考えてくれているのではないかと考えたのです。
これを私たちの気づかないうちに起きている思考なので、無意識思考と呼びます。
複雑な選択では無意識思考が良い結果を出せるか?(仮説)
単純な選択ではメリットとデメリットを比較検討して意思決定した方が満足のゆく選択ができそうです。
ところが、車の選択のような複雑で難しい決断では意識的思考(=論理的思考、合理的思考)より無意識思考を使ったほうが良い選択ができるのではと考えたのです。
つまり、
- じっくり考える意識思考(論理的思考・合理的思考)は単純な課題では良い意思決定を行なうことができる
- しかし、複雑な課題では、処理容量が限界を超えてしまうため、良い意思決定はできない。無意識思考は、容量の制約がないため複雑な課題では良い意思決定ができる
という仮説を立てたのです。
この仮説を検証するために2つの実験が行われました。
実験①:4台の車からベストな1台を選ぶ
被験者に4台の車を提示し、その中からベストな1台を選んでもらう実験を行いました。
提示された4台のうち、1台は最も良い車(燃費が良い、色の選択肢が豊富など良い属性を多く持つ)、もう1台は最も悪い車(燃費が悪い、色の選択肢が少ないなど悪い属性を多く持つ)、残り2台はそのどちらでもない中間の車でした。
4台の車はランダムに提示され被験者は課題の難易度に応じて2つの条件に分けられました。
- 単純条件・・・車に関する属性は4個
- 複雑条件・・・車に関する属性は12個
つまり、単純条件に割り当てられた被験者は属性が少ないのでより簡単な選択となります。
複雑条件に割り当てられた被験者は12も属性があるのでかなり多い情報を考慮に入れて選択する必要があります。
さらに、それぞれの条件で2つの思考モードに被験者は割り当てられました。
- 意識思考条件・・・車の情報が提示されてから4分間考える時間が与えられます。考えたのち、ベストな1台を選択してもらいます。
- 無意識思考条・・・車の情報が提示されてから4分間文字の並び替え問題(=アナグラム課題)を解いてから、ベストな1台を選択してもらいます。
①意識思考条件の方では、被験者は意識的につまり論理的に考える時間が与えられます。
一方、②無意識思考条件の方では車の課題とは全く関係のない問題を解いてから選択を行なうことになります。
全く関係のない問題とは、アナグラム問題といいまして、言葉を並べ替えることで違う意味の言葉をつくる課題です。
例えば、「郷ひろみ(ごうひろみ)」→「ゴミ拾う(ごみひろう)」などです。
これを無意識思考条件では4分間やってもらうわけです。
ポイントは、この課題をやっている間は車の選択について一切考えることができないということです。
意識的思考を妨害するという意味で、この無意識思考条件中に課される課題を妨害課題と呼びます。
研究者らはどの条件がもっとも良い選択ができたのか割り出しました。
実験結果は次のようになりました。
研究者の仮説通りの結果となったのです。
つまり、単純条件ではじっくり考える意識思考条件のほうがよい選択できました。
一方、複雑条件では無意識思考条件の方がよい選択ができたのです。
実験②:4台の車を評価する
実験①の結果を踏まえ、より仮説を確かにするために実験②に行なわれました。
実験の条件などは実験①と同じですが、1点だけ違いがありました。
実験①では、4台の中から最も良い車を選ぶ課題でした。
実験②では、4台の車をそれぞれ点数をつけて評価してもらったのです。
この実験では、最も良い車に最高得点を最も悪い車に最低得点をつけるのが良い判断となります。
そして、最も良い車に付けられた得点から最も悪い車に付けられた得点を引いた得点を基準に選択の確かさを割り出しました。
実験結果です。
実験①と同じ傾向を示しました。
やはり、複雑条件では無意識思考が良い選択をしていました。
これらの2つの実験によって研究者らの仮説は支持される結果となったのです。
つまり、単純な課題ではじっくりと意識的に考えることで良い選択でできます。
一方、情報が多い複雑な課題では無意識思考を使った方が良い選択ができることが判明したのです。
車を選ぶポイント:じっくり考えない
実験①②から車を選ぶ際は「じっくり考える」という行為はかえって良くない結果をもたらす可能性がありそうです。
今回の実験では車の属性は12個でしたが、実際は12以上あることが普通だと思います。
それらを比較検討するのは事実上不可能なのです。
そこで、無意識思考を活用し選択するのが賢いやり方になります。
具体的にはどうすればよいのでしょうか。
初めて車を選ぶ・初心者の場合
まずは、あなたが初めて車を選ぶまたは初心者の場合はとにかく車に関する情報を徹底的に集めることです。
情報を多くすればするほど、良い選択ができる精度が上がりますからね。
ディーラーに行く、営業マンからお話を聞く、パンフレット、ネット、車情報誌など、たくさん媒体はあります。
それらの情報を踏まえたら多くても5台前後、少ない場合は3台前後に候補が絞れますよね。
そうしましたら考えるのやめて、無意識思考にゆだねましょう。
音楽を聴く、読書・・なんでもOKです。
あなたが車選択以外の他のことをしている間にも無意識がちゃんと考えてくれます。
あとは、閃くのを待ちましょう!
ちょっとしたインスピレーションも逃さないようにすることが肝心です。
閃いた一台、それがあなたのベストな1台になるかもしれません。
今回の記事は以上となります。
車選択のような複雑で難しい意思決定では無意識思考がベストな選択をもたらす可能性があるという記事でした。
もちろん、じっくり考えて決める、ピンときた直観で決めるというのでもいいとは思います。
(要は、どんな決断であれ納得できればいいですしね)
それに無意識思考を加えると思考の幅が広がりより満足のゆく選択ができる可能性があることを示しました。
是非、ご活用ください。
お読みくださりありがとうございました。
本記事では『On Making the Right Choice: The Deliberation-Without-Attention Effect』というタイトルの論文を参考にしました。