詐欺や騙し関連のニュースが毎日のように放送されていますね。
ある調査によると私たちは1日に約2回は嘘をついているようです。
そんな自覚はないかもしれませんが・・。
また、就職の面接においては応募者は平均約2回は嘘をついているという調査報告もあります。
つまり・・・
正直でいることが美徳とされる社会ではありますが、嘘や騙しというのは私たちの生活と隣り合わせなのです!
もちろん、ちゃんと嘘を真実を見分けることができれば問題ないわけです。
ところが、実際はそうではないようです。
これまでの研究によると、人が嘘を見分ける能力というのは極めて低く、実際に判定させるとほぼデタラメに選んだと変わりはないようです。
また嘘を見抜く人に特徴的な能力というのも今のところ見つかっていないようです。
例えば、警察官のような専門家は一般の人より嘘を見抜く能力に長けていると普通は考えますよね。
ところが、これまでの研究を踏まえるとそうとも言えないようです。
実際、専門家でも一般人でも嘘を検出する能力に差はないという研究報告があります。
さらに、嘘の検出能力というのは、教育や性差、年齢や自信という要素とは何の関係もないというのです。
つまり、生活上重要なのにも関わらず、人間の心は嘘と真実を見分けることには向いていないのです。
何故、嘘と真実を見分けることが難しいのでしょうか。
その理由と対処法について2回に分けてご説明いたします。
嘘と真実を見分けるのが難しい理由
よく採用面接などであることないことを話して自分を良く見せようとする人がいますよね。
「嘘も方便」なんていう言葉があるくらいですから、採用してもらうためには何でもやってやろうという魂胆ですよね。
でも、こういう嘘って簡単に見分けることができると思いませんか?
「あからさまな嘘なんて見分けるの簡単だ」
そんな声が聞こえてきそうですね。
でも、これまでの研究を踏まえるとそう単純な話ではなさそうです。
実は「嘘と真実」とを見分けるのはプロ、素人に関わらず極めて難しいのです。
これが詐欺などがなくならない理由です。
では、なぜ、判別するのが難しいのでしょうか?
嘘と真実を見分けるのが難しい理由は主に4つあります。
- 決定的な手がかりがない
- 意識的な情報処理の制約
- 誤った観念を使ってしまう
- トップダウン処理をしてしまう
それぞれ個別に説明します。
①決定的な手がかりがない
嘘をついているときに、目線が浮ついたり、挙動不審になる、ということを聞いたことはありませんか?
他にも、「あの、あの・・」となったり。
私も以前、怪しい訪問販売にあったことがあるんです。
その時は、まだ学生だったのでドア越しにまともに応対してしまったんです。
でも、すぐに怪しいということがわかりました。
すごく挙動不審で、こちらの質問にしどろもどろに答えるんですね。
単に自信がないというより嘘をついているというのがバレバレでした。
これはあからさまな例ですが、実際は嘘なのか真実なのかわからないというのがほとんどなのだと思います。
だから、詐欺被害が後を絶たないわけです。
確かに、嘘と真実を語っているときでなぜ人間の振る舞いが異なるのかという研究や理論は数多くあるのです。
ですが、その基礎となる決定的な手がかりが少ないのです。
- メッセージが詳細であるかどうか、もっともらしくないか
- 発言を途中で修正する
- 記憶が不鮮明
こういった要素は、虚偽の検出に一役かっているようです。
しかし、これらの要素があるからといってすべてが嘘であるというわけでもなく、決定力に欠けるのです。
②意識的な情報処理の制約
私たちの意識的な情報処理には限界があります。
例えば、一度に記憶できる数は7個前後といわれています。
これはマジカルナンバーセブンとも呼ばれています。
携帯の番号は090-1111-1234のように11桁あるので口頭でいわれて一度に記憶できる人はあまりいないかもしれません。
これは記憶の例ですが、記憶し情報処理するということには制約があるのです。
嘘を見分けるにあたって様々な根拠や手がかりを必要とします。
もしそれが、明らかなものであれば情報処理の容量は少なくてもよいでしょう。
例えば、相手が明らかに挙動不審であったり緊張している場合などです。
ところが、「話の内容がもっともらしいように聞こえる・・が、真実のようにも思える・・」という場合はどうでしょうか。
もっともらしいという段階では虚偽か真実かは見分けることができません。つまり、より注意を向けなければいけないためより認知的な容量を必要とします。
こうした嘘を検出するための手がかりは通常1つだけとは限りません。
複数あるのが普通です。
そうすると脳の情報処理量を超えてしまい、適切に判断できなくなるんですね。
脳にバケツがあることをイメージしてください。
情報がそのバケツにはいって、脳は情報処理をしてくれています。
少ないうちは問題ないでしょう。
ところが、情報量が多くなると溢れ出してしまいきちんと情報が処理できなくなってしまうのです。
さらに、虚偽判定の材料には言語情報と非言語情報の2つがあります。
言語情報は言葉で直接話される内容で非言語情報は身振りやジェスチャーといったものです。
つまり、話の筋を追いながら身振りなどの雰囲気から虚偽判定しなければならないのです。
私たちの意識的な思考というのはこのように何かを複数に同時に処理するということが非常に難しいのです。
これらの言語・非言語情報の複数の手がかりを同時に意識的に情報処理するには私たちの脳の情報処理量を超えてしまうのです。
それゆえ、虚偽判定が難しくなるのです。
③誤った観念・先入観を使ってしまう
私たちは嘘と真実を見分けるときに誤った観念、先入観、考えをもっています。
ある研究によると、神経質な表情・視線を合わせることを嫌うこと・手足の動き・全体的な身体の動きなどを虚偽と結びつけてしまう傾向があるそうです。
確かに、視線を合わせることを嫌い、身体を神経質に動かしていたら怪しい感じがしますよね。
でも、この考えは間違いのようです。
例えば、嘘つきは相手を騙そうとアイコンタクトを避けるように思いますよね。
ところが、嘘つきが真実を語る人よりアイコンタクトを嫌うという根拠のない迷信のようです。
さらに、嘘つきが真実を語る人より手足を小刻みに動かすなどの身体動作があるというのも根拠がないのです。
むしろ、嘘つきは真実を語る人より身体動作は少ないという研究結果があるくらいなのです。
私たちはこのような誤った観念、考え、イメージを持っているがために嘘を見抜くことの難しさに拍車をかけているといえるでしょう。
④トップダウン処理をしてしまう
情報処理のスタイルにはトップダウン処理とボトムアップ処理の2種類があります。
トップダウン処理とは、すでに持っている知識などを前提に見たり聞いたり読んだりするものを理解する方式のことです。
例えば、「血液型で性格が異なる」という仮説を持っている人はA型は几帳面、O型はおおらか、B型は変わり者のように血液型だけで、その人の性格特徴を作り上げてしまいます。
時間はかかりませんが、バイアスを生みやすいのです。
(ボトムアップ処理とは、逆にそういったものに囚われずに言動などからその人の特徴を作り上げます。こちらの方が時間はかかりますがバイアスは生みません)
私たちは真偽を見分けるときにどうしてもこのトップダウン処理に依存していまうというのです。
経験則やステレオタイプというのも当てはめて判断しようとするのです。
例えば、見た目が魅力的な人は正直者であろう、などです。
これはアナウンサーを見ればわかりますよね。
なぜか美男美女だらけです。
服装や身なりが整っているというだけで、「この人はきちんとした人だ」と無意識に判断してしまうのです。それが、プロの詐欺師であっても。
逆に、魅力的ではない見た目の人はあまり正直者のように思わないようです。
さらに、童顔の人はより信用に値すると判断されるという研究報告もあります。
多くの研究が指摘しているのは、私たちが虚偽を判断するときにトップダウン処理をする傾向があるということです。
つまり、トップダウン処理が虚偽の判定を難しくしまっていえるでしょう。
これは人間の特性上やむを得ないことなのかもしれません。
今回の記事では、嘘や詐欺を見抜くのか難しい理由をご紹介しました。
4つの理由から見抜くのが難しいわけですが、これらをクリアをする方法があるのです!
次回の記事では研究をご紹介しながら、嘘を見抜くための方法について書きます。
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