サッカーの予想は、考えるほど当たる?――無意識思考と専門知識の関係

「今度の試合は、どちらが勝つだろう」

チームの成績や選手の特徴を思い浮かべながら、試合の展開を予想する。スポーツ観戦の楽しみの一つです。

詳しい人ほど、考える材料は豊富です。しかし、知識を持っていることと、その知識を予想に活かせることは、同じなのでしょうか。

この問いを、サッカーの試合予想を使って調べた無意識思考の研究があります。

すぐに答える、考える、いったん離れる

Dijksterhuisらが2009年に発表した研究では、サッカーの知識と、予想するまでの思考条件の関係が検討されました。

二つの実験で、参加者は次のいずれかの条件で試合結果を予想しました。

  • すぐに予想する
  • 意識的に考えてから予想する
  • 別の課題に取り組んでから予想する

三つ目が、研究で「無意識思考条件」と呼ばれるものです。予想の対象から注意をそらしたあとに回答する条件であり、何も知らずに勘で答えることとは区別されています。

研究では、サッカーに詳しい参加者が無意識思考条件で、より正確に予想するという結果が報告されました。二つ目の実験では、予想に役立つ情報を判断に反映する点でも、この条件の優位性が示されました。

研究の概要を読む(Dijksterhuisら、2009年)

この研究の面白さは「知識の使い方」にある

この結果から考えたいのは、知識の量だけでなく、それを判断にどう使うかという問題です。

たとえば、チームについて多くのことを知っていても、予想するときに何を重視するかは別の問いです。

最近見た印象的なプレー、好きな選手の活躍、長期的な成績。それらを知っているとしても、すべてを同じ重さで扱う必要はありません。

この研究は、思考の条件によって、持っている知識の活かされ方が変わる可能性を検討したものと読めます。

ただし、「詳しければ、無意識が必ず正しく判断してくれる」という結論には進めません。

研究の解釈には、異論もある

González-VallejoとPhillipsは2010年、このサッカー予想研究を再検討しました。

その論文では、無意識思考が詳しい人の予想を改善するという証拠について、理論面と統計面の両方から疑問が示されています。

これは、別の実験で単純に勝敗をつけたという話ではなく、元の研究からどこまで結論を導けるかを問い直したものです。

研究を再検討した論文を読む(González-VallejoとPhillips、2010年)

したがって、「考えると予想が悪くなる」「別のことをすれば的中率が上がる」という一般的な法則が確立したとは言えません。

また、サッカーを題材にした結果を、そのまま競馬など別の予想に当てはめることもできません。この研究は、賭けによる利益を保証するものではありません。

自分の予想を、振り返れる形にする

ここからは、研究の結果を直接再現する手順ではなく、自分の判断を見直すための方法を提案します。

スポーツ観戦を楽しみながら試すなら、予想とその理由を、試合前に短く記録してみてください。

1.予想と根拠を書き分ける

「Aチームが勝つと思う」と書いたら、その理由も一つか二つ残します。

「最近の成績を重視した」
「主力選手の出場情報を参考にした」
「応援しているチームなので、勝ってほしい気持ちもある」

確認した情報と、自分の期待を分けて書くことがポイントです。

理由を詳しく説明できない場合は、「直観ではこちらだと思う」と、そのまま記録して構いません。

2.迷ったら、検討を区切る

同じ情報を何度も見て迷っているなら、いったん別のことをしてから、予想を見直す方法もあります。

そのとき、答えが変わったかどうかだけでなく、重視する理由が変わったかを確かめます。

新しい情報が入ったのか。最初に気にしていたことが、それほど重要ではないと感じたのか。それとも、理由はわからないままなのか。

無理に「無意識が答えを出した」と説明する必要はありません。変化したことを、そのまま残します。

3.結果が出たら、理由も見直す

試合後には、当たったかどうかに加えて、予想の根拠を振り返ります。

「重視した情報は、実際の展開と関係していたか」
「予想した時点では、何がわかっていなかったか」
「結果を知ったあとで、理由をつけ足していないか」

一度当たっただけでは、その予想方法が優れているとは判断できません。外れた場合も含めて記録を残すことで、自分がどんな情報を頼りにしているかを確かめられます。

知識を増やすことと、判断を見直すこと

無意識思考の研究は、考える時間の長さだけでは捉えきれない判断の働きに目を向けています。

サッカー予想の研究からも、「どれだけ知っているか」に加えて、「何を重視して答えを出したか」という問いが浮かびます。

試合前に予想と理由を残し、試合後に読み返す。そこから、自分の知識の活かし方や、直観との付き合い方を考えてみてはいかがでしょうか。

関連する読みもの

参考文献

  • Dijksterhuis, A., Bos, M. W., van der Leij, A., & van Baaren, R. B.(2009). Predicting soccer matches after unconscious and conscious thought as a function of expertise. Psychological Science, 20(11), 1381–1387. 論文情報
  • González-Vallejo, C., & Phillips, N.(2010). Predicting soccer matches: A reassessment of the benefit of unconscious thinking. Judgment and Decision Making, 5, 200–206. 論文

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