私たちは、問題について考えている間だけ「思考」しているわけではありません。
いったん問題から離れ、別のことをしている間にも、頭の中では情報の整理や統合が進み、新しい発想や判断につながることがあります。
こうした、意識的な注意を向けていない間に行われる情報処理に注目した考え方の一つが「無意識思考」です。
無意識思考は、「何も考えない」という意味ではありません。むしろ、意識的に考え続けることとは異なるかたちで、私たちの思考や意思決定に関わっている可能性があります。
なぜ「考えない時間」が重要なのか
難しい問題に直面すると、私たちは「もっと考えなければ」と思いがちです。しかし、考え続けることが常に最善とは限りません。
一度問題から離れ、別の活動に注意を向けることで、それまでに得た情報が違ったかたちで整理され、思いがけないアイデアや判断につながることがあります。
「ずっと考え続ける」のではなく、意識的に考える時間と、いったん思考から離れる時間をどのように組み合わせるか。そこに、よりよい思考のヒントがあります。
無意識思考の研究
無意識思考については、心理学の分野で、意識的に考え続ける場合と、いったん問題から注意を離した場合とで、その後の判断や選択にどのような違いが生じるのかが研究されてきました。
特に、比較する情報が多い複雑な意思決定や、新しいアイデアを求められる場面では、意識的な熟考だけではなく、いったん問題から離れる時間が、その後の判断や発想に影響する可能性が指摘されています。
一方で、無意識思考の効果については、条件によって結果が異なる研究もあります。したがって、「考えなければ必ずよい答えが出る」という単純なものではありません。
大切なのは、意識的な思考と無意識的な情報処理を対立するものとして捉えるのではなく、それぞれの特徴を理解し、問題に応じて活かしていくことです。
無意識思考と創造性
よいアイデアは、机に向かって考え続けているときだけに生まれるとは限りません。
問題について十分に考えたあと、散歩をしたり、別の作業をしたりしているときに、ふと解決策を思いついた経験がある人も多いのではないでしょうか。
心理学では、このように問題からいったん離れたあとに、アイデアや解決策が生まれやすくなる現象が「インキュベーション(孵化)」として研究されてきました。
問題から注意を離している間にも、それまでに得た情報が整理されたり、これまで結びつかなかった情報同士が新しいかたちで結びついたりする可能性があります。こうした働きは、創造的な発想を考えるうえで重要なテーマです。
つまり、創造性を高めるためには「もっと長く考える」だけでなく、十分に考えたあと、あえていったん離れることも、一つの思考戦略になり得ます。
無意識思考と意思決定
私たちは日々、さまざまな選択をしています。選択肢が少なく単純な問題であれば、情報を一つずつ比較し、意識的に考えることが有効です。
しかし、選択肢や判断材料が多くなると、すべての情報を同時に意識して比較することは難しくなります。こうした複雑な意思決定において、いったん問題から注意を離すことが、その後の判断に影響する可能性が研究されてきました。
これは「直感のままに決めればよい」ということではありません。まず必要な情報を集め、問題について考えたうえで、あえて少し距離を置く。その後、改めて判断するという考え方です。
意識的に考え抜くこと、直感を活かすこと、そしていったん思考から離れること。どれか一つを万能な方法と考えるのではなく、状況に応じて使い分けることが、よりよい意思決定につながると考えています。
無意識思考を日常や仕事に活かす
無意識思考を活かすために大切なのは、単に「考えるのをやめる」ことではありません。
まずは問題について必要な情報を集め、ある程度しっかり考える。そのうえで、いったん問題から離れる時間をつくることがポイントです。
たとえば、企画を考えているとき、文章を書いているとき、重要な選択をするとき。行き詰まったまま考え続けるのではなく、散歩をする、別の作業をする、休憩するなどして、一度注意を別の対象へ向けてみます。
その後、あらためて問題に戻ることで、新しい視点が生まれたり、それまで気づかなかった選択肢が見えてきたりすることがあります。
「考える → いったん離れる → もう一度考える」
この流れを意識的に取り入れることが、無意識の情報処理を思考に活かす一つの方法です。
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「考え続けること」だけが、よりよい答えにたどり着く方法ではありません。
『Third Thinking』では、意識的にじっくり考えることや直感だけでは捉えきれない、もう一つの思考の可能性に注目しています。
無意識の情報処理は、私たちの発想や判断にどのように関わっているのか。そして、意識的な思考と無意識の働きを、日常や仕事の中でどのように活かすことができるのか。研究知見をもとに、「考える」という行為を新しい角度から見つめ直します。
「考え抜く」だけではなく、「考えたあと、いったん離れる」。
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